山の手、下町

ユニオン・石立ドラマの中で、千野、平山監督と美術の佐谷氏が手がけた4作品。その主な舞台は以下のとおりです。

1971年「気になる嫁さん」、砧、成城
1972年「パパと呼ばないで」、佃、月島、勝どき
1973年「雑居時代」、成城
1974年「水もれ甲介」、雑司が谷

この4作品、東京の山の手、下町が交互に舞台になっていますが、その地域の雰囲気、暮らしぶりを見事に描写していると思います。

月島出身のあるお年寄りに聞いた話ですが、「パパと呼ばないで」の井上精米店のセットは、その方の実家の造りにそっくりだったそうで、佃、月島あたりの家屋や家財道具を忠実に再現しているとのこと。「住んだ者じゃないと、あそこまで出来ないわね」と至極、感心していました。

前回取り上げた「箸箱」について調べたところ、興味深いことがわかりました。

「気になる嫁さん」の清水家は「箸箱」を使用
「パパと呼ばないで」の井上家、使用せず
「雑居時代」の栗山家、使用
「水もれ甲介」の三ツ森家、使用せず
「気になる嫁さん」第8話より

上の写真は「気になる嫁さん」の清水家の朝食風景です。箸箱が食卓に並んでいますね。「めぐ」と「ばーやさん」が給仕をする様子も、忙しさの中に、どこか山の手の「おっとり」感があります。
「パパと呼ばないで」第20話より

一方「パパと呼ばないで」の井上精米店の朝食準備風景。園子が箸の束から、家族それぞれの箸を選び出し、じかに食卓の上にポンポンと置いていきます。下町の「ちゃっきり」感が出でますね。

月島出身のそのお年寄りのお宅や周り家では箸箱を使う習慣は昔から無かったそうです。職人さんや商売をしている家が多く、「片膝立てて、早飯をする江戸っ子は、いちいち箸箱になんか入れないわよ」とのこと。

まあ、この話の通りだとすると、千野、平山監督と佐谷氏らは箸箱の有無にまで拘ったということなんですね。「気になる嫁さん」には箸箱を登場させましたが、その次の「パパと呼ばないで」の撮影現場では、「下町じゃ、箸箱なんか使わねえよ!」なんていう指示が飛んでいたのでしょうか?
(この「箸箱、山の手、下町説」は小生の勝手な思いで、学術的な裏付けはありません。) 

補足
ユニオン・石立ドラマ、7作品の監督(美術監督)、箸箱の使用有無は以下の通りです。

1971年「おひかえあそばせ」
千野皓司、梅谷茂、(河村寅次郎)
池西家は箸箱は使用せず、食卓には筒型の箸立てあり。
1971年「気になる嫁さん」
千野皓司、田中知巳、手銭弘喜、平山晃生、(佐谷晃能)
清水家は箸箱を使用。
1972年「パパと呼ばないで」
千野皓司、平山晃生、田中知巳、(佐谷晃能)
井上家は箸箱を使用せず。
1973年「雑居時代」
千野皓司、平山晃生、手銭弘喜、小山幹夫、(佐谷晃能)
栗山家は箸箱を使用。但し、箸箱は第5話から登場、1から4話までは、何故か登場していない。
1974年「水もれ甲介」
田中重雄、千野皓司、手銭弘喜、平山晃生、荒木功、(佐谷晃能)
三ツ森家は箸箱を使用せず。
1976年「気まぐれ天使」
斎藤正光、手銭弘喜、鶴島光重、田中知巳、荒木功、佐藤重直、(横尾嘉良)
荻田家は箸箱を使用せず。
1977年「気まぐれ本格派」
手銭弘喜、小山幹夫、鶴島光重、田中知巳、田中重雄、平山晃生、(坂口武玄) 
清水家は箸箱を使用せず。

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