パパと呼ばないで ロケ地の楽しみ(9) 佃・月島・勝どき その9

今ではめっきり減ってしまいましたが、『パパと呼ばないで』が放映された1972年当時は、まだ、銭湯はあちらこちらにありました。特に、ドラマの舞台となった佃・月島・勝どきは、太平洋戦争の被害から免れたため、昔ながらの銭湯の建屋がそのまま残されました。また、明治・大正時代に建てられた木造の民家は「内風呂」が無いため、近年までこの地域の住人は銭湯に行くのが、いわば当たり前でした。

私の母親の記憶では、佃・月島・勝どきには、合わせて10軒以上の銭湯が戦前からあったとのこと。大体、各丁目に1軒の銭湯があり、その地域の住民の風呂の役目を果たしていたと考えられます。戦前、戦中の頃、祖父母一家が銭湯に行くのは2、3日置で、「今日はお湯の日だね」と、当時幼かった私の母親や叔父・叔母達は、夕方になると大騒ぎしていたそうです。

夕飯を終えると、浴衣に着替えた祖母は、真鍮のたらいに、着替えの下着や、石鹸、タオルを入れ、幼い子ども達を引き連れ銭湯に向かいます。祖母は子ども達と女湯、一足先に出かけた祖父は男湯に入って、職人仲間と熱い湯に浸かっていたことでしょう。銭湯に行くこと自体が、1つの家族のイベントだった時代です。

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ところで、もう6年前になりますが、TBSラジオ『爆笑問題日曜サンデー』に脚本家、松木ひろし氏が生出演されました。「石立はシャイな奴なんだな。かおると銭湯に入るシーンの撮影中、彼は真っ赤になって飛び出してきて、もうダメだと。こどもの裸に当てられちゃったんだね」と、撮影エピソードを語ってくれました。

右京が千春と銭湯に入るシーンは第5話のラスト。千春が右京の背中をゴシゴシこすって、最後に桶で冷たい水を右京にぶっかけるといういたずらをしてドラマが終わります。ロケ地となった銭湯は、映像に「勝どき2丁目10−14」という住居表示が写っていたため、容易に場所を特定できした。残念ながら、現在はマンションが建っています。(ロケ地の写真はこちら

お気づきの方もいると思いますが、この勝どきの銭湯の他、ドラマにはもう一つ別の銭湯が登場します。下の写真は最終話から。園子が千春をかき氷屋に誘ったシーンです。路地の向こう、煙突がある木造の建物は銭湯です。

この銭湯は一体どこなのかとても気になります。私も見覚えがある風景なのですが、どうしても思い出せず、ネットでいろいろ検索しているうちに、月島2丁目にあった「東湯」だと確信しました。路地の突き当りに位置していることや、建物の形からして、間違いありません。

(2019年4月29日、追記)
現地を訪れてみました。この辺り一帯は路地や木造の家屋はほとんど消滅してしまいましたが、何と、この路地だけは残っています。当時の木造の長屋も健在。この路地の突き当りにあった東湯は取り壊されて今は公園になっています。

月島2丁目4。2019年4月22日、撮影。

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ロケ地の写真を掲載します。

第29話。千春と和子。

佃1丁目4−9。2018年9月17日、撮影。


第30話。「もしも、園子おねーちゃんがママだったら」と園子。何を言わず駆け出す千春。

月島4丁目1−1、月島第一小学校(現在は区民センター)、2018年9月17日、撮影。


第30話。右京と治子の仲を誤解する精太郎。

隅田川堤防、佃1丁目3−13辺り、 2018年9月17日、撮影。


第31話。思い悩む園子。

佃1丁目9−11、2018年9月17日、撮影。


第31話。千春と昇。

月島3丁目31−1、西仲橋、2018年9月17日、撮影。


第31話。千春を探す右京と園子。

佃1丁目4−8、2018年9月17日、撮影。


第32話、千春と小学校の友達。

月島3丁目31−1、西仲橋、2018年9月17日、撮影。

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