着物について、あれこれ

『雑居時代』第14話、当時の放映日は1月2日。今では正月三が日のテレビは特番ばかりですが、当時はこういったレギュラーのドラマを放映することは珍しくなかったことが思い出されます。この第14話では、ラストに栗山家姉妹が華やかな着物姿で登場しますが、それは、三が日の放映を意識してのことだったのでしょう。

雑誌『映画秘宝』のインタビューで、山口いづみさんが語っていましたが、いづみさんが着ていた、この黒い着物、実は、川口晶さんご自身のプライベートのものを、いづみさんに貸してくれたのだそうです。

ところで、『雑居時代』の着物のシーンをピックアップしてみると、

第14話、栗山家姉妹、晴れ着姿で、新年を祝う
第15話、秋ちゃん、晴れ着姿で立ち回り
第15話、夏代さん、割ぽう着姿で十一におかゆを
第16話、京女の真弓さん、白に花柄の訪問着で登場
最終話、春子の結婚式、第14話同様、栗山家姉妹は晴れ着姿で登場。
最終話、10年後、着物姿の夏代さん(第15話と同じ着物?)

まだ他にもあります。第1話で登場する十一の両親は、大場邸で着物姿。信さん自身も、会社から帰宅すると着物に着替えます。日本のお父さんは、家では着物でくつろぐのが、まだ普通だった時代でした。




こうして振り返ると、『雑居時代』は、頻繁に着物を使用しているように見えますが、当時としては、普通の感覚だったように思います。着物がまだ日常の風景に普通に溶け込んでいた時代だったんですね。

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最近のドラマや映画を観ていて気になるのは、着物へのこだわりがあまり感じられなくなったことです。今では、レギュラーの時代劇は、NHKの大河を除き、全く無くなりましたね。製作者の着物への需要も減ったこともあるのでしょうか、きちんと着物を扱える美術スタッフもひところに比べると、めっきり減ったのではないかと思われます。

市川崑監督演出のサントリーのCM、もちろん大原麗子さんは素敵ですが、彼女が着ている着物がすばらしいですね。美術は東宝の村木忍さん。1978年の『悪魔の手毬唄』から市川作品、殆ど全ての美術監督をしています。

村木女史の着物へのこだわりには、ただならぬものを感じます。1977年の『悪魔の手毬唄』や『獄門島』あたりでは、着物の提供元はクレジットされていませんでしたが、1983年の『細雪』、84年『おはん』では、「きもの三松」がクレジットされています。映画で使用する着物は全て、彼女がデザインして三松に作らせたものでしょう。同様に、サントリーCMの着物も「三松」製だと思われます。

艶やかで繊細、そして観るものを飽きさせない奥深さ、この方が造りあげる世界にはワクワクさせられます。『雑居時代』の佐谷氏と並んで、私が好きな美術監督の一人です。
1980年、サントリーレッドCM『リュック篇』、大原麗子さん33歳
1985年、サントリーレッドCM『磯釣り篇』、大原麗子さん38歳

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