雑居時代 ロケ地の楽しみ(12) 新宿、花園神社

「おさんどん」で、「お勝手を仕切って」家族全員の世話をしている夏代さん。ドラマの台本では、彼女は26歳という設定です。当時の20代は今よりもずっと大人だったと思いますが、その分を割り引いたとしても、26歳にしては、彼女はしっかり者で、やや古風な女性に描かれている感じがします。そんな彼女の、それまでの人生や生活はどんな様子だったのか、興味あるところです。ドラマに描かれていない部分を、勝手な想像で膨らませてみました。

夏代さん達のお母さんはマリーを産んだ時に亡くなりました。台本ではマリーの年が9歳という設定ですから、お母さんが亡くなったのは9年前ということになります。その当時、彼女は17歳の高校3年生。おそらく、高校卒業後は進学も就職もせず、そのまま家庭に入り、家族の世話をするお母さん業に専念したのだと思われます。

家事に明け暮れる夏代さんの唯一の楽しみは詩です。秋ちゃんが夏代さんのことを「文学少女の成れの果てというヤツさ」と言っていたり、第7話に登場するヒッピー風の友人(小林トシ江さん)などから推察すると、高校時代からも同人誌などに参加していたと思われます。

家事の合間に時間を見つけては詩を書いて、同人誌などに投稿して来たのでしょう。その世界ではいつしか有名となり、プロとして作詞も手がけるようになりました。第10話ではヤクザ風のレコード会社の人(木島新一さん)からは「栗山先生」と言われ、第22話では、原宿のカフェ「ノア」で、サンバの曲に合わせた詩を、音楽プロデューサー(小澤幹雄さん)に手渡していましたね。

栗山家のお母さんが亡くなった後、彼女が母親代わりに家族の面倒を見ることになったことから、必然的にしっかりせざるを得なかったことはもちろんですが、それに加えて、良妻賢母になるべく、古風なしつけを、以前より(大正生まれの)お母さんから受けて来たことも大きいと思われます。

そんなお母さんのしつけの一端がうかがえるのが、箸箱です。当時でも、家庭の食卓で箸箱を使うことは、ほとんど無かったように思いますが、栗山家では、それぞれ箸箱から箸を取り出して、食事を始めます。この箸箱は、夏代さんがお母さんから受け継いだ習慣でしょう。箸を洗って乾かした後、それぞれの箸を箸箱にしまうなんて、何と面倒なことかと思いますが、彼女はお母さんからその習慣を引き継ぎ、ずっと続けているわけですね。

第14話では、夏代さんは正月用にお供え餅の準備をしていました。当時も既に真空パックの餅は普及していましたが、栗山家では、近所のお米屋か和菓子屋に木箱で配達してもらった、つきたての「のし餅」を大晦日に切り分けることが、毎年の恒例になっているようです。おそらく、これもお母さんから受け継いだ栗山家の行事なんだろうと想像できます。

夏代像が、当時からしても、やや古風な女性に設定されていることをさらに裏付けるのが、第18話、新宿・花園神社に十一とお参りをするシーンです。

花園神社、本殿前。
十一 「何をそんなに長くお祈りしていたんだい」
夏代 「ついでに、お父さんや妹達の分までご利やくがあるようにお願いしてきたの」
十一 「はっはっ、それじゃ、200円じゃ安いな」
夏代 「あんたもねー、これで大丈夫よ。おみくじも大吉だったし」
十一 「女は迷信に弱いなー、キミみたいな女でさえ、そうなんだから」
夏代 「迷信と信仰はちがうの。山にも、ほら、山の神様ってあるでしょ。祈りは感謝ってことなのよ。こんなこと言っても、あんたにわかんないでしょうけどね」


「祈りは感謝ってことなのよ」

おそらく、これも夏代さんはお母さんから学んだことなんでしょう。そして、この言葉から、夏代さんの人柄や、彼女の今までの人生が、伝わってくるような気がします。

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その花園神社ですが、元旦ともなると、大勢の初詣客で賑わい、ロケ地写真を撮るどころではなくなりますので、12月29日にロケ地スポットを写真に収めました。例のごとく、ドラマ映像とできる限り同じアングルです。








皆様、よいお年を。
(2014年大晦日)

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