雑居時代 ロケ地の楽しみ(6) 渋谷、喫茶店を探す

渋谷駅前の人混みを抜け、公園通りへ向かう。

随分と小ぎれいになったものの、かつての活気はないなあ、などと思いながら、公園通りの坂をしばらく登る。案外、この坂きつい。昔はそんなこと感じなかったんですがね(苦笑)。

この坂道を登り切った先には、区庁舎、公会堂、代々木競技場、NHK、そして代々木公園へと続く開放的な空間が広がっています。この辺りは、1964年のオリンピックで開発された地域なんですね。

下の写真は1976年の渋谷区役所前の風景です。左が区庁舎、右は公会堂。今もこの2つの建物はほとんど変わっていませんね。渋谷公会堂は1964年のオリンピックで重量挙げの会場として建設された施設で、その後コンサートホールになりました。かつては、ここで『8時だョ!全員集合』や『紅白歌のベストテン』などの収録も行われていました。

手前に見える時計塔、懐かしいですね。気がつくと、いつの間にか撤去され、現在は区庁舎寄りに別の時計塔(地下駐車場排気塔)が建っていますこの曲線デザインが印象的な当時の時計塔、石立ドラマの背景にも、たびたび写っているんです。
写真1、渋谷区役所前、1976年
1971年、ユニオン・石立ドラマ第1弾、『おひかえあそばせ』第10話、梅子が薫の父親と行った喫茶店です。窓越しに、この時計塔が見えますね。その向こうの建設中のビルはNHK放送センター高層棟(本館)です。
写真2、『おひかえあそばせ』第10話
1973年、『パパと呼ばないで』第16話、右京が橋本(千春の実父)と会うシーンです。同じ喫茶店のほぼ同じ位置での撮影。背後には同じ時計塔、さらに、その向こうには完成したNHK放送センターが見えます。
写真3,『パパと呼ばないで』第16話
そして、1973年『雑居時代』第7話。家出した夏代さんが入ったのも同じ喫茶店。背後右手に、同じ時計塔が見えますね。
写真4,『雑居時代』第7話
ところで、このロケ地となった喫茶店は、いったいどこなのか、とても気になるところです。下の写真5は時計塔があった位置から喫茶店方向を撮影したものです。左の曲面デザインの建物がコロンバンビル。あの洋菓子の老舗、コロンバンさんの事務所ビルです。昔はここに喫茶店がありました。撮影に使用されたのはそのコロンバンさんの喫茶店ではないか、との情報があり、実際、コロンバンさんに問い合わせてみました。当時のことを知っている社内の方に上の写真3を見ていただいたところ、残念ながら、コロンバンさんではないとのこと。柱やテーブルがコロンバンさんの当時のものとは違うそうです。
写真5,渋谷区役所前、カンパリビル方向、2014年1月18日撮影
そうすると、ロケ地・喫茶店は、おそらく、コロンバンビルの隣、上の写真5の「Super Suits Store」というスーツ屋さんの辺り(カンパリビル)ということになるでしょう。

下の写真6はカンパリビル前からNHK方向を撮ったものです。上のドラマ映像と見比べるとわかりますが、横断歩道やNHKが見える角度から、ロケ地・喫茶店はこのカンパリビルの場所にあったと考えて間違いないでしょう。
写真6,渋谷区役所前、NHK方向、2014年1月18日撮影
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もう少し、ロケ地・喫茶店について推理してみましょう。

写真5で、カンパリビルの右横の通りを入っていった辺りの風景が下の写真です。正面には新しい時計塔(地下駐車場排気塔)、さらにその向こうにはNHKが見えますね。道路の右手、青い時計塔のすぐ右側に見えるのがカンパリビルの側面です。そして、左手の茂みが北谷公園です。
写真8、北谷公園前、2013年11月30日撮影
下の写真9は『雑居時代』第22話、フーコとデコちゃんが十一と卒業写真ビジネスの話を終え、飛び出してきたところです。前方にNHK、左手には北谷公園が見えます。上の写真8のおよそ40年前の風景ということですね。

あれ?よく見ると、カンパリビルはありませんね。

でも、その場所にロケ地・喫茶店があったということは、その店はカンパリビルに入居していたのではなく、それ以前の建物にあったということになります。この写真を見る限り、その建物はビルではなく、もう少しこじんまりとしたものだったと思われます。
写真9,『雑居時代』第22話、北谷公園前
下の写真10は石立ドラマ、第2弾『気になる嫁さん』第5話、輝正が会社のOLと偶然会ったシーンです。この写真ではわかりませんが、ドラマ映像の背景には渋谷公会堂や建設中のNHKが写っており、このロケ地も同じ喫茶店であることがわかります。
写真10、『気になる嫁さん』第5話
この『気になる嫁さん』の第5話、ロケ地・喫茶店の店内が結構よく写されています。階段が見えることや、パイプ状の鉄柱などから、おそらく、この喫茶店は2階または3階建の鉄骨構造の建物であったと推定できます。また、ドラマ映像にはコロンバンビル側のテラス席とその周りの緑が写されていました。入り口附近にも緑が見えますね。それに加え、写真9で北谷公園側にも緑が見えることから、この喫茶店の周りには多くの樹が植えられていたこともよくわかります。

長々と書きましたが、総合すると、この喫茶店は樹々に囲まれたモダンなデザインのカフェといったイメージのものだったと思われます。私も、当時どんな建物だったのか全く記憶がありません。喫茶店の名前もわかりません。石立ドラマがこれだけお世話になった喫茶店の情報、もう少しわかるといいですね。もし、覚えている方が居られましたら、ご一報いただければ幸いです。

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2014年9月11日、追記

1966年の松竹映画『恋する年ごろ』で、この喫茶店がロケ地に使用されていたとの情報があり、早速、CSの放映でチェックしました。

間違いなく、この喫茶店です。入口の奥の窓ガラスには、クロスされたパイプ状の柱も見えます。一階がカフェ・スナック、2階がグリル、3階がレストラン・バー、という英語の表示、その2年前に開催された東京オリンピックの影響でしょうか。3階のレストランは、後に『水もれ甲介』でも使用されていました。

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