雑居時代 ロケ地の楽しみ(5) 渋谷、ファイヤー通り
80年代の半ばにはドーム型の屋根が象徴的な「東京電力館」、90年代にはアメリカ大手CDショップ「タワーレコード」などがオープンし、センター街や公園通りだけでなく、こちらにも足を運ぶ人が増えたようです。
このファイヤー通り、『雑居時代』第22話に登場します。もっとも40年前には、ファイヤー通りなどと気の利いた名前も無かったわけで、ここがロケ地として選ばれたのは、人通りも少なく撮影に持ってこいの場所だった、ということかもしれませんね。
第22話のラスト、十一と夏代さんのやりとり...
夏代「ねえ」
十一「え?」 振り返る。
夏代「また天丼食べに行きましょ」
十一「...ああ」 笑顔。
以前にも書きましたが、夏代さんが「また天丼食べに行きましょ」と言ったのは岸記念体育館前ですが、十一が「ああ」と返したのは、この通り沿いの水道局の辺りです。岸記念体育館前からは50mほど南下した地点となります。
この二人の会話は「中抜き」と言われる手法で制作されています。それぞれのアップやバストのカットを別々に撮影し、後でつなぎ合わせて、一連のやりとりになるように編集したんですね。石立さんや大原さんの演技が絶妙に息が会っている、と感じるこのシーン、実はこのカット割を組み立て、編集指導した平山晃生監督のセンスの良さによるものだと、観るたびにつくづく感じます。
さて、今回もできる限りドラマ映像と同じアングルで、ロケ地を写真に収めてみました。
第22話
1. 岸記念体育館前(ファイヤー通り終点)
2013年11月30日、撮影
2.ファイヤー通り、水道局辺り
2011年12月30日、撮影
『雑居時代』が撮影された40年前は無味乾燥としていたが、銀杏が植えられ、今では紅葉が美しい通りに。
2013年11月30日撮影
3.ファイヤー通り、(旧)東京電力館前
同じく22話で、十一とフーコが警察から出てくるシーン。背後にはいかにも警察という感じの建物が写っていたが、実は「大畠ビル」という名の雑居ビル。ドラマ映像には一瞬だが「大畠建設」の看板が写っていた。現在はモダンなビルに建て替えられているが、オーナーは同じ「大畠建設」。今でも貸しビル業を続けているようだ。
また、ドラマ映像には警察とは無縁な日本習字(財)の看板が写ってしまっている。このドラマの「重箱の隅をつつく」ネタの1つ。
2013年11月30日、撮影
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ところで、以上のシーンは、映像に写る影の方向から、午前の早い時間に撮影されたと推察できます。おそらく、十一、夏代さん、フーコ、デコちゃんらをロケバスに乗せて、人通りがほとんど無い早朝、この通りに向かい、これらのシーンを続けて撮影したものと思われます。
フーコと卒業写真ビジネスの山分け話をしている十一、夏代さんに「ああ」と笑顔を返した十一、実は、このファイヤー通りロケで一緒に撮られていたわけですね。綿密に組み立てられたカット割と、入念なロケハン。後は限られた時間で欲しい映像を一気に撮っていく。そんな制作スタッフや役者達の当時の空気が伝わってくるようです。
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