雑居時代 ロケ地の楽しみ(3) 成城の街、その2

1970年代・初頭の世田谷には、畑や田んぼが多く残っていたように思います。私鉄路線の各駅を中心に、宅地開発が進みましたが、一歩外れると、田舎の風景があちこちに残されていました。土のままだったり、砂利が敷いてあるぐらいの、舗装されていない道路もまだ多く見られました。

『雑居時代』第15話、正月、十一と玄也は、もぐりの獅子舞を始めます。駅前の商店街で、たんまりとご祝儀を集めた二人が、商店街外れの橋を笑いながら渡るシーンです。


小田急線の土手や、遠くに見える雑木林、土のままの道、道端の枯れ草、瓦屋根と漆喰壁の家、昭和を感じさせる風景ですね。今、こういった風景を見ると、懐かしさよりも、何故だか、ホッとする情緒を感じます。

でも、不思議ですね。高度経済成長真っ只中の当時は、こんな風景に、情緒なんて感じる人は一人もいなかったと思います。家の周りが、どんどんアスファルトで舗装されていく。もう、雨水で泥々になった道を歩かなくていい。畑だったところに住宅が立つ。肥やしの臭さが無くなり、街が垢抜けていく。

この経済成長の先には何があるのだろう?そこにある街の風景って?当時は、誰もそんなことを考える余裕も無かったし、また、思い描けた人も少なかったと思います。

下の写真は、同じ場所を先日、撮影したものです。コンクリートとアスファルトで地表は覆われてしまいました。何とも味気ない風景ではありませんか。多額の投資をして、鉄道や街並みを整備していく。耐久性、経済性、利便性などを追い求めたら、当然こんな結果になるのかもしれませんね。

十一や夏代さん、そして当時のほとんどの日本人は、40年後の街の姿がこんな味気ないものだとは、誰も想像していなかったでしょう。でも、成長の先にある、40年後の風景とは結局はこういうことなんですよー、改めて、そう突きつけられると、なんだか虚しくなりますね。
2013年9月29日、撮影。
さて、前回に引き続き、その40年の年月を感じさせる、ロケ地写真を紹介します。

第8話
4.世田谷区成城2丁目19番地附近、
「誘拐犯」を追いかけて、立ち止まる秋枝。

2013年9月29日、撮影
前回紹介した、マリーが小寺に声をかけられた四つ角のシーンは、この道路の手前を左に曲がった地点で撮影したもの。写真の左手に、同じお宅の黒いフェンスが写っている。

5.世田谷区立・明正小学校、校門、夏代さんを目当てにやってきた稲葉先生と十一。


2013年9月29日、撮影
校門の階段は、当時と位置も形も違う。その後、改築されたようだ。
十一達の背後に見える木戸や杉皮葺の塀に秋の日が差し、昭和を感じさせる。

6.再び、成城2丁目19番地附近、十一、小寺を追いかける。

2013年9月29日、撮影
前回紹介した、マリーが小寺に声をかけられたシーンも、この四つ角を使用。ここを左に曲がった所が、秋枝のシーンに使用されている。

7.成城2丁目38番地、マンション「成城コンド」前、十一、小寺を捕まえる。

2013年9月29日、撮影
突き当りに見えるのが小田急線。線路はこの辺りから、地下に潜る。突き当りを右に曲がると、冒頭で紹介した橋に出る。左手に見えるマンション「成城コンド」のレンガ風タイルは当時のまま。

「成城コンド」は、同じく、ユニオン・石立ドラマ『気になる嫁さん』にも登場。輝正と八重子のマンションのロケ地。このマンション、石立ドラマファンにとっては、今や貴重な存在ですね。

第9話
成城通り、成城6丁目14番地附近、十一がタクシーに轢かれそうになる。
「とんちき野郎!」

2013年9月29日、撮影
タクシーの背後、右手に写っていたコンクリートの建物は俳優の宇津井健さん宅。「葡萄屋」は、夫人が地下で営んでいたレストラン。このコンクリートの建物は、2013年春ごろには、既に、解体されていた。奥に見える瓦屋根の家は当時のまま。イチョウの樹も変わらず。

第15話
成城学園前駅、北口商店街、魚屋「魚康」前

2013年9月29日、撮影
魚康さんは、かなり前に魚屋を廃業している。店はビルに建て替え、現在、1階を花屋とブティックに貸している。魚康さん自身は、このビルの裏手で「房」という小料理屋をやっていたが、今はその場所も「たい焼き屋」に貸している。

***

「ハロウィーン、昭和は遠くなりにけり」


(2014年3月14日 追記)

俳優の宇津井健さんが他界されました。ご冥福をお祈りいたします。
かつて、夫人が営んでいた「葡萄屋」は、石立ドラマ『気になる嫁さん』にも登場します。この青い看板が印象的でしたね。
『気になる嫁さん』、第5話

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