パパと呼ばないで ロケ地の楽しみ(7) 佃・月島・勝どき その7

下の写真は第18話から。昇が千春を使って、同級生の叔子(とし子)を呼び出そうとするシーンです。叔子は佃煮屋・天安の娘という設定。

天安は江戸時代・天保8年創業の老舗。木造の趣ある店の前には佃煮を買い求める客の他、スケッチや水彩画などを書く人たちも目につきます。佃島にある佃煮の老舗は、天安の他にも田中屋と丸久がありますが、知名度は天安が断トツです。

月島出身の古老「昔から、天安っていうのは特別だったね。佃煮と言えども、庶民にとっちゃ、天安のはちょっとした贅沢って言うのかね」天安さんは江戸の昔から、暖簾・ブランドイメージを大切にしてきた結果と言えるかもしれませんね。

でも、味はと言うと、人の好みはそれぞれのようで、この3軒の老舗は甲乙付け難いと思います。実は、私は3軒の中では田中屋さんが好みです。

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天安の他、このドラマには佃・月島の古くからの店がいくつか写っています。この地域は第2次世界大戦の被害から免れたため、昔ながらの街並みが残り、創業が戦前、さらに明治・大正時代という店が数多くあります。最近の再開発事業で、そういった店もどんどん消失しているので、「数多くあった」と言った方が正確かもしれません。

下の写真は第34話から。千春がスキップしていたのは、西仲通り商店街の交番を清澄通り方面へ曲がった辺り。背後に写っていたのはニコニコのソフトクリームで有名な喜久乃家さん。この店も戦前からの甘味屋さんです。(この地域一帯の再開発で、現在は月島3丁目に移転)。

下の写真は第39話から。熱海に新婚旅行に行っているはずの右京と園子が西仲通り商店街を歩いているところを千春が見てしまうシーンから。ふたりの背後に「玉井ふとん店」の看板が見えます。商店街にある普通の寝具屋さんですが、創業は大正6年。残念ながら、今年、西仲商店街を訪れたときは、もんじゃ焼きの店に変わっていました。昔、撮影しておいた写真を掲載します。

2014年4月20日、撮影。


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ドラマには登場していませんが、今も残っている古くからの店といえば、岸田屋さんを取り上げないわけにはいきません。牛煮込みが有名で、最近ではテレビでもちょくちょく紹介されています。この岸田屋さん、かつては佃・月島地域の「国民酒場」でした。「国民酒場」とは、戦時中、酒の販売を統制する一環として、当局が東京の一般勤労者向けに地域ごとに指定した大衆酒場です。 夕方の限られた時間で、一人当たりビール1本か、酒1合だけを飲むことが許されました。どこも、開店前から長蛇の列ができ、割り込みなどの喧嘩は珍しくなかったようです。

私の祖父も、この「国民酒場」によく行っていたクチでした。
「辰さん、おせーな、入んな」と行列にいる職人仲間。
遅くやって来た祖父は、いつの間にか行列の先頭になっていました。何故か文句を言う者はいなかったようです。祖父はいわば地域の「顔役」で、いつも喧嘩の仲裁役をやっていたこともあるでしょう。

祖母は「ご飯できたから、父さん呼んどいで」と、私の母をよく岸田屋に行かせました。母が店の中を覗くと、奥の立ち呑みカウンターで、近所の職人さん達と、コップ酒をやっている祖父がいました。

祖父は私が幼少の頃に他界してしまいました。祖父と直接話した記憶はわずかしかありません。 こうして、佃・月島の話を書いていると、もっと当時の話を聞けたらと、悔やまれます。

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ロケ地の写真を掲載します。

第17話。

佃3丁目8−6、2018年5月4日、撮影。

第17話。治子から逃げる右京と千春。

佃3丁目11付近、2018年5月4日、撮影。

第17話。千春とバッタリ出会った精太郎。

佃1丁目3−13、2018年5月4日、撮影。

第18話。千春とだるま船の子供達、豆腐を売る。

佃1丁目4−4、森稲荷神社辺り、2018年9月17日、撮影。

第18話。同じシーン。

佃1丁目4−4、森稲荷神社辺り、2018年9月17日、撮影。

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