颱風とざくろ(4)

前回に続き、このドラマに写っている1969年当時の東京の風景を探ってみたいと思います。新宿駅西口など高度成長期の波に乗って既に再開発されていた場所は、このドラマに写っていた風景が今でも残っていることが多いのですが、一方、その後に開発された場所は、当然ながら当時の風景は消されてしまいます。その最たる例は何と言っても、日本国有鉄道(国鉄)の駅でしょう。

当時の国鉄は、累積する赤字に加え、不動産や流通で収益を上げることは制限されており、戦前からの駅舎や、はたまた空襲で焼けた場合は、戦後の復興期に建てられた駅舎をずっとキープしている場合が多かったように思います。結果、急激に変貌していった当時の東京の中にあって、時間が止まったような空間が、あちこちの国鉄の駅に残ったわけです。このドラマの第11話に登場した、四ツ谷駅などは、そんな昔の駅舎が残っている典型でした。

下の写真は坂本二郎(石坂浩二さん)が、モーニングショー司会の高田謙吉(下條正巳さん)を待ち伏せて追いかけるシーンです。ふたりが歩いていたのは、国鉄・四谷駅の四ツ谷口。この風情ある瓦屋根の駅舎は、永らくこの界隈の風景を形作っていましたが、1987年に国鉄の分割、民営化が開始されて、残念ながら、1990年にはコンクリートの駅ビルに建て替えられてしましました。

2011年にCS・チャンネルNECOで放映された時は、フィルムの劣化により、この第11話だけ、放映されませんでした。私自身、この第11話を観たのは今回の放映で、約半世紀ぶりとなり、ちょっとした感動ものでした。NECOさんの修復作業には、拍手喝采したい気分です。


2017年11月26日撮影。

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一方、あまり変わっていない風景。下の写真は第11話から。白いパンタロンの英子(松原智恵子さん)と黄色いTシャツの二郎(石坂浩二さん)が歩いていたのは新宿駅東口。先日撮影した同ポジションの写真を掲載します。何と、正面に写っていた果物屋さん「百果園」と、その右隣の喫茶店「Cafe de Bore」、50年近く経った今でも健在です。嬉しいですね。


2017年10月28日撮影。

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