颱風とざくろ(3)

60年代に入ると東京オリンピックを目指して、東京のあちらこちらの場所は再開発の名の元、大きく変貌していきました。このドラマが制作されたのは1969年。このドラマに写っている当時の東京の風景にも、既に開発が終わっていた場所と、これから開発する場所とが混在しています。既に開発が終わっていた場所は、50年近く経った今でもあまり変わらない風景が残っていることが多いのですが、一方、その後に開発された場所は、当然、当時の面影が全く無く、これはいったい何処だろうと、ロケ地の探索に頭をひねります。

まずは、あまり変わっていない風景から。下の写真は第10話のオープニング、タイトルバックの映像から。オレンジ色の服の佐久間英子(松原智恵子さん)が歩いていたのは、新宿京王百貨店と小田急百貨店の間の通路、「モザイク通り」です。シリーズ前作、『若い川の流れ』の第8話でも登場しました。

新宿京王百貨店ビルが建てられたのは1964年、小田急百貨店は1967年。すなわち、下の写真は、この新宿駅西口が再開発されて間もない頃の風景ということですね。

最近撮影したばかりの同ポジションの写真を掲載します。通路一面に貼られていた当時のタイルは無くなってしまいましたが、小田急百貨店も京王百貨店も当時の建物ですから、風景の骨格はそのまま残っていますね。(当時のモザイク・タイルはこちら

2017年10月28日撮影。

一方、 当時の面影が全く無く、これはいったい何処だろうと、頭をひねる例。第10話、坂本二郎(石坂浩二さん)は、実家、坂本産婦人科で過去に赤ん坊取り違え事件があったことを知らされます。事件の真相を聞くため、当時の婦長の自宅住所を調べた二郎は、居候先の友人のマンションから地下鉄駅へと飛び出して行きます。

ドラマの展開も気になるところですが、私がもっと気になったのは、この地下鉄の入口、「青山一丁目駅」。この地下鉄入口の階段は道路と平行して設置されています。現在、青山一丁目交差点に突き出ている地下鉄入口の階段は、たしか交差点角にあり、道路に対して斜めに向いて設置されていませんでしたっけ。こんな入口、今は無いですよ。

では、この風景はいったいどの辺りでしょうか?このドラマが撮影された1969年当時は地下鉄・半蔵門線や大江戸線はまだ無かったので、この青山一丁目駅は銀座線のもの。とすると、背後にビルが並んでいるあたりには青山ツインタワーがあるはず。調べると青山ツインタワーが建設されたのは1978年でした。すなわち、この風景は青山ツインタワーが建設される前の風景ということですね。今では、地下鉄の入口も青山ツインタワーの中に入ってしまいましたが、当時は青山通りの歩道に突き出ていたわけです。同じく、先日撮った同ポジションの写真を掲載します。昔の面影は全くありませんね。

2017年10月28日撮影。

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