颱風とざくろ(1)

チャンネルNECOでドラマ『颱風とざくろ』(1969)が始まりました。ネガからデジタル化したとのことで、前回・2008年の放映より格段に映像も音声も質が上がっています。

プロデューサーに名を連ねるのは、ユニオン・石立ドラマの吉川斌(あきら)さん。そして、制作スタッフには、選曲・鈴木清司さん、美術・佐谷晃能さんの名がクレジットされています。ご両人ともユニオン・石立ドラマの常連スタッフです。

日本映画で好きな美術監督は、と聞かれたら、私は真っ先に、東宝の村木忍さん、中古智さん、そして、日活出身の佐谷晃能さんを挙げます。

ロケ現場に実在する建物に合わせて、細部にまでこだわり、リアリティー溢れるスタジオ・セットを作るというのが佐谷氏が得意とするところです。例えば、『パパと呼ばないで』では、実在するお米屋さんをモデルに、佃島の典型的な家屋を細部に渡って再現し、『雑居時代』では「赤いタイル」を利用して、ロケ地である三船ビルと調布撮影所に作ったセットを一体化させています。

下の写真は『颱風とざくろ』第1話から。主人公、佐久間英子(松原智恵子さん)が帰宅するシーンです。ロケ地は小田急線・成城学園前駅、北口商店街の外れに実在する葬儀社「佐久間本店」。この趣ある瓦屋根の建物は、数年前にビルに建て替えられていますが、葬儀社は今でも続けられています。

下の写真も同じく第1話から。「佐久間本店」内部のスタジオセットですが、実際の葬儀社を借りて撮影したかと思われるほど、リアリティーがあります。『パパと呼ばないで』や『雑居時代』が今でも色褪せない名作と言われるのは、この佐谷さんの細部にまでこだわったセットによるところも大きいのではないかと思います。


花と葬祭「佐久間本店」、2017年8月18日撮影。

因みに、原作では主人公の名は「桑田英子」ですが、ドラマでは「佐久間英子」に変わっています。撮影に協力してくれた葬儀社が「佐久間」だったので、主人公の名もそれに合わせて変えたわけですね。

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下の写真も第1話から。英子(松原智恵子さん)が 佐久間本店を出て、路線バスに乗り込むシーンです。このロケ地は一体どこでしょうか?

「下本宿」行きのボンネットバスがこちらに向かって、ちょっと曲がりながら走ってくるのが見えます。調べると、成城学園前から千歳烏山駅北口行きの小田急バス(路線番号、成02)は、当時、三鷹・下本宿まで走っていたとのこと。すなわち、このバス路線で、このように折れ曲がった所を探せばよいわけです。

ありました、ありました。ちょうど、「成城4番」というバス停の辺りです。正面に見えるお宅の垣根や、一方通行標識に当時の面影が感じられますね。

2017年8月18日撮影。

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