若い川の流れ(5)

大晦日、今年もあとわずかですね。年の瀬を迎え、忙しい毎日を過ごしていると、『雑居時代』第14話を思い出すファンの方も多いのでは。

稲葉は「週刊ドリーム」の仕事を十一達に任せたまま、また山の写真を撮りに行ってしまっている。大晦日、熱があるにもかかわらず、借金の支払いに奔走する十一は、稲葉の知り合い、武田のチリ紙交換の仕事を手伝うはめになってしまう。

武田は妻に逃げられ、息子のケン坊と二人で、みすぼらしいアパートで暮らしていた。そんな、ダメそうな人間にまで、稲葉は金を借りたり、山で助けられたりしていたことを十一は知らされる。純真無垢な芸術家と言えば聞こえはいいが、要は自己管理能力がない稲葉のために、大晦日に奔走している十一。身も心もズタズタで、自分を見失いそうなぐらい孤独と不安を覚える。

武田のアパートを出ると、外は真っ暗、今にも雪が降りそうな寒さ。公衆電話ボックスにたどり着いた十一は、高熱でもうろうとしながら編集長に語りかける。「編集長、今、ボクの周りには誰もいないんです。おやじもおふくろも、稲葉先生も。人を信じていいのか、信じちゃいけないのか。神谷さん、ボクを殴ってください...」そんなことを言いながら、そのまま十一は電話ボックスで倒れ、救急車で病院に運ばれてしまう。

一夜が開けると、元旦。シーンは一転し、明るい栗山家のリビング。晴れ着姿の栗山家姉妹が新年を祝う...

雪がちらつく、暗く寒い公衆電話ボックスのシーンからガラッと変わって、晴れ着姿の栗山家姉妹が勢揃いする明るいリビングのシーンへの切り替え。このコントラストを強調した演出は、栗山家姉妹の華やかさ、家族の温もりを改めて感じさせてくれます。

栗山信は、十年後のシーン(最終話)で、こんなことを言っていました、「家族っていうのはいいもんだよ」。この言葉は、ずばり 『雑居時代』全話を通して根底に流れるテーマであるような気がします。そして、そのテーマ「家族っていうのはいいもんだよ」を見事に演出しているのが、この第14話ではないでしょうか。

借金の返済や寒さと高熱で不安感と孤独感を覚え、稲葉も信じられなくなりそうになった十一を癒やしてくれたのは、栗山家姉妹や正月を祝う家族の温かさでした。夏代さんの「ほっぺが落ちるかもしれない」お雑煮に、さすがの十一もジーンときたに違いありません。

第14話「失礼しました!」は、全26話の中でも、妙に後を引くというか印象に残る回ですね。 そんな、こんなの『雑居』論を、思い巡らす大晦日です。

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ところで、ジャイアンツ戦の雨傘番組であった ユニオン・石立ドラマは、大概どれも野球シーズンが終わる秋から始まり、半年、一年と続きます。今では考えられませんが、当時はユニオン・石立ドラマだけではなく、年を越して続くドラマが結構ありました。例えば、『雑居時代』と同時期に放映されていたドラマ、『さよなら、今日は』(大原麗子さん「雑居」と掛け持ち)や『おやじの嫁さん』(山口いづみさんも「雑居」と掛け持ち)も、年を越して、半年の放映でした。

『雑居時代』第14話は1月2日放映の為、ラストに晴れ着姿の栗山家姉妹を登場させましたが、正月を意識したシーンは、『雑居時代』の源流ドラマでもある日活・石坂洋次郎ドラマにも結構見られます。このシリーズも年を越す作品が多かったので、必然的にお正月のシーンも登場したわけですね。

下の写真は『若い川の流れ』、第13話から(1969年1月6日放映)。主人公・北岡みさ子(松原智恵子さん)らが神社へ初詣するシーンです。当時はカラー作品であることがひとつの売りだった時代。こんな何気ないシーンでも、色彩配置や、着物の着付けに至るまで、テレビドラマと言えども映画並のクオリティーを求めた日活スタッフ達の仕事が感じられます。

写真: 『若い川の流れ』、第13話から。かなりカラー作品であることを意識した映像です。日活は原色系のカラフルな映像作りを基本にしていたように思います。それは後に『雑居時代』の映像作りへと継っていきます。ところで、上の写真、襟をかなり詰めて着る松原智恵子さんの着こなしは流石に上品ですね。

写真: こんなロゴ・マークを覚えていますか?カラーテレビが普及し始めた当時、カラー番組の冒頭に挿入されていていました。

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着物の他にも、『雑居時代』には神社がよく登場します。例えば、第15話の大國魂神社、第18話の花園神社、第26話の東郷神社。これも、日活・石坂洋次郎ドラマの流れを汲むものかもしれませんね。例えば、『ある日わたしは』では第18話に大國魂神社、第25話に杉並・大宮八幡宮(ドラマの設定では、金沢の由緒ある八幡様)、『若い川の流れ』では、上の写真の世田谷八幡宮などが登場しています。

先日、世田谷八幡に行って来ました。ロケ地写真をUPします。
皆様、良いお年を。 

『若い川の流れ』第5話から

2016年11月6日、撮影

『若い川の流れ』第13話から

2016年11月6日、撮影

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