ある日わたしは ロケ地の楽しみ(2)

CS・チャンネルNECO、『ある日わたしは』(1967)。先週、ついに最終話(第28話)を迎えました。当時、高視聴率を誇ったとあって、約50年経った今見ても面白いドラマです。結構、惹き付けられました。

内容も然る事ながら、このドラマの魅力は何といっても35ミリ・カラーフィルムによるロケ撮影がふんだんに取り入れられていること。映像に写った当時の東京の風景、そして、そのロケ地は今どのようになっているのか、たいへん興味をそそられます。

『雑居時代』ついては、熱烈なファンが今までに多くのロケ地を調査して、既に場所を特定しています。例えば、代表的な「三船ビル」、「成城3丁目・お茶屋坂」、「岸体記念体育会館前」から、夏代さんが音楽プロデューサーとの打ち合わせに使った原宿の喫茶店「ノア」などのマイナーな所まで、今ではほとんどのシーンのロケ地が明らかになっています。ロケ地を訪ねてみたいファンにとっては便利な情報ですが、同時にロケ地を推理しながら特定していくという楽しみは失われてしまいました。

一方、このドラマ『ある日わたしは』に関しては、今のところロケ地の情報はわずかです。今回が約50年ぶりの放映ですし、『雑居時代』ほどの熱烈なファンもいないわけですから、当然といえば当然でしょう。反面、ドラマに登場する当時の東京の風景が一体どこなのか、1つ1つ推理していく楽しみがあるわけですね。

下の写真は第10話、ゆり子(松原智恵子さん)と次郎(和田浩治さん)が、次郎が借りようとしているアパートへと向かうシーンです。木造モルタル・2階建てのアパート。よくありそうな風景です。これだけではロケ地がどこなのか、すぐにはわかりませんね。

でも、よく見ると、左端の電柱に緑色の住居表示があります。録画を一時静止して見ると、かろうじて「赤?四丁目2」または「西?四丁目2」と読めました。グーグル・マップで「東京都赤?4丁目2」と入力してみました。そうすると「東京都世田谷区赤堤4丁目2」の辺りが表示されました。なるほど、「赤堤」か。あの辺りならこんな風景がありそうですね。念のため、「東京都西?4丁目2」と入力。「西新宿」「西葛西」「西東京市」....どれも、文字数が2文字ではありません。「西?」である可能性は低いようです。映像に写っていたアパートは「赤堤四丁目2番地」辺りにほぼ間違いないようです。

早速、グーグル・ストリートビューでその辺を散策。しかし、現在の風景は約50年前のドラマ映像とはかなり違います。やはり、ストリートビューでロケ地探索は限界がありますね。そうこうする内に、第15話、ゆり子が次郎のアパートを訪れるシーンで、再びこのアパートが登場しました。

右側に「2−10」という番地表示が見えますね。「世田谷区赤堤4ー2ー10」とグーグル・マップで再度、検索すると、「カーサ・ベルデス」というマンションが表示されました。「2−10」という表示が本当なら、おそらく、当時はこの場所に木造アパート「いとう荘」が建っていたのでしょう。しかし、もう少し確証が欲しいところです。

もう一度、ゆり子と次郎が車から降りるシーンをみてみましょう。ふたりは車から降り、前方へ数メートル歩き、右に曲がります。曲がった先にこのアパートが建っていたわけです。あれ、よく見るとこの道路、坂になっていますね。坂...NHKの某番組で得た知識ですが、東京の道路の傾斜は昔から変わりません。それに、今まで多くのロケ地を見てきましたが、現地に行くと必ず何か発見があるものです。そこで、ストリートビュー散策は止めにして現地へ赴くことにしました。

***

「世田谷区赤堤4丁目2番10号」に到着。
ありました、ありました、坂道が。

2016年4月28日、撮影。

左手奥に見える、赤い「止まれ」の標識。手前に向かってわずかに下り坂。まさしく、この場所ですね。

下の写真はゆり子と次郎が車から降りて右に曲がった辺りです。すなわち、最初の写真の約50年後の風景です。新しい街路灯が同じ位置に見えます。電柱には「赤堤四丁目2」という表示も見えます。消火栓、街路灯、電柱などの公共設備は時間が経っても位置はなかなか変わらないものですね。
 
2016年4月28日、撮影。

ロケ地、特定できました!

***

もうひとつ、挑戦してみましょう。

下の写真は第13話の1カット。向こうから歩いてくる和服の女性は、レーシング・ドライバー黒木の内縁の妻、小夜子(池田昌子さん)。次郎(和田浩治さん)は右手の店でたばこを買っていたところ、小夜子とばったり出会うという設定です。舗装されていない道路に、水たまり、丸型の赤い郵便ポスト。懐かしい昭和の風景ですね。このロケ地が一体どのなのか、これもまた興味をそそられます。でも、先ほどのアパートみたいに電柱に住居表示もありませんし、見渡す限り手がかりになるものはありませんね。

ここであきらめてはいけません。 このシーンのロケ地も、次郎のアパートの近くのはず。おおよそロケ地は近くにまとまっていることが多いようです。ロケハンする手間や撮影の移動を考えると必然的にそうなりますよね。このシーンの録画をもう一度見てみましょう。何か手掛かりがあるはず。

この写真ではお伝えできませんが、ドラマの映像では風景の奥手、「止まれ」の標識の先は交差点になっており、車が左手から手前に曲がって来るのが写っていました。よーく見ると、その車は直角にターンしたのではなく、やや鈍角にターンしたのです。「あー、そうか。この交差点は直角に交わっていない! すなわち、このアパートの近くで、直角に交わらない交差点を探せばいいんだ」

グーグルマップで探すと、あるではありませんか!東急世田谷線松原駅を少し西に行った辺りの交差点がそのような感じになっています。早速、現地調査。

2016年4月28日、撮影。

ありました、ありました。奥手に見える交差点に当時の面影が感じられます。そして、ちょうど右手前に「青木国林堂」という文房具屋さんがあります。おそらくドラマに登場した店でしょう。当時はたばこ屋の窓口もあったと思われます。

もうひとつ、ロケ地、特定できました(喜)!

コメント

人気の投稿