ある日わたしは ロケ地の楽しみ(1)

現在、CSで放映中の『ある日わたしは』(NTV、1967年)。松木ひろし氏が脚本を担当し、後にユニオン映画へ移籍した千野皓司氏や手銭弘喜氏などが監督をしています。『あいつと私』と並び、ユニオン・石立ドラマの源流ともいうべきドラマです。

主人公、城山ゆり子とその妹、かおりは、故郷の山城から上京し、京王井の頭線、駒場東大前駅近く、線路沿いに位置する大沢家に下宿することになるのですが、隣の山崎家とは、小さな中庭を隔てただけの、互いの生活が見えてしまうような近さ、という設定です。山崎家は、気弱なお父さん(大坂志郎さん)と4人の息子が暮らしています。互いの個性がぶつかり合って、家族の仲は今ひとつ、しっくりと行っていません。

これって、どこかにあったようなシチュエーションですね。そうそう、『気になる嫁さん』ではないですか。清水家は小田急線の線路沿い、めぐみの部屋と、文彦と力丸の部屋は、中庭を隔てただけの近い距離にありました。おそらく、『気になる嫁さん』の清水家の原型は『ある日わたしは』の山崎家でしょう。

今週は第21話、物語もいよいよ佳境に入ってきました。オーロラ自動車へ寝返ったレーサー黒木、契約金と山崎家の借金、どういう展開になるのでしょうかね。私はこのドラマをリアルで観ていた記憶がありますが、ストーリーまでは思い出せず、今回のCSでの放映を毎週楽しみに観ている次第です。

当時、このドラマは吉永小百合さん主演の裏番組『娘たちは』(TBS)に視聴率で勝ったので、主演の松原智恵子さんは、プロデューサーからハワイ旅行とカラーテレビのご褒美をもらったそうです。平均視聴率は23%だったとか。確かに今観ても、面白いドラマです。

ドラマ自体の面白さに加えて、このドラマの楽しみは何と言っても、ふんだんに取り入れられているロケ撮影です。デジタル・リマスターされた映像による約50年も前の東京の風景には、録画を一時静止して、思わず見入ってしまいます。

例えば、第15話では、南青山3丁目交差点にあった「VAN」ショップが登場しました。アイビー・ファッションの火付け役、あの「VAN」の看板が映った時には、少なからぬ感動を覚えました。

南青山3丁目交差点にあったVANセレクトショップ

南青山3丁目交差点から青山通りを外苑前方面に見た風景。クリーム色に赤帯の都電が懐かしいですね。

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さて、城山ゆり子たちの下宿先があった京王井の頭線、駒場東大前に赴き、ロケ地を写真に収めてきましたので、UPいたします。例によって、ドラマカットと同ポジションで撮るようにしました。

第2話

山城温泉から上京したゆり子とかおり。下宿先に着き、タクシーから降りたシーン。瓦屋根、ブロック塀、舗装されていない道、生い茂る木々。むわーと、昭和の香りが漂ってきますね。こういう風景、とてもいいですね。魅せられます。

ゆり子達の下宿先、大沢家は右手の瓦屋根のお宅でしたが、その後、建て替えられてしまいました。隣人、山崎家に使用されたお宅は今でも健在のようです。


2016年1月11日、撮影。

駒場東大前駅。そう言えば、切符の自動販売機もない時代でした。


2016年1月11日、撮影。

かおりが良夫(松山省二さん)と商店街でばったり会い、いっしょに帰るシーン。商店街から東大へと続く階段は今も当時のたたずまいを残しています。「駒場東大前駅入口」というサインボードは無くなりましたが、階段の右手の手すりは、まさしく当時のものですね。


上写真の階段を登り、踏切を渡ったあたりが下のカット。井の頭線沿いに渋谷方向を見た風景です。この道をしばらく歩いた左手に大沢家、山崎家のロケ地があります。


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35ミリフィルムのカラー撮影。スタジオ・セットから飛び出して、ふんだんに取り入れたロケ。映画会社・日活が作るドラマはテレビ局が作る、いわゆる「局ドラマ」とは一線を画したい、とのこだわりが感じられます。このこだわりは、ユニオン・石立ドラマに受け継がれることになるのです。

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