『雑居時代』の源流ここにあり(5)

CS「チャンネルNECO」で、48年ぶりに放映されている石坂洋次郎ドラマ『ある日わたしは』。このドラマの第11話は、当時、1968年の元旦に放映された正月用の特別企画です。その年の元旦はちょうど、このドラマの放送枠の月曜日だったんですね。

そういえば、『雑居時代』の第14話も、1974年の1月2日放映。ラストで、栗山家・姉妹達が晴れ着姿で登場するあたりは、正月を意識しての演出でした。あの頃は三が日といえども、レギュラー番組や連続ドラマの枠はきっちりと確保されていた時代でしたね。

この『ある日わたしは』第11話、ドラマの本筋から離れ、主人公・ゆり子が友人達と『11PM』のカバー・ガールのアルバイトをし、登場人物たちがコントを繰り広げます。また、妹・かおり役のジュディ・オングさんが、歌手「ジュディ・オング」として、『11PM』に登場したりして、さながら「新春かくし芸大会」といった感じの内容となっています。



ヒット曲「たそがれの赤い月」を歌うジュディ・オングさん。
 
ところで、このような特別な回で思い出すのが、『気になる嫁さん』の第27話「ただいま撮影中!」。当時、この27話を観た時には少なからず驚きましたが、こういった遊び心満載のおちゃらけ企画というのは、源流である日活・石坂洋次郎ドラマから受け継いだものだったのかと、あらためて納得する次第です。(「ただいま撮影中!」の話はこちらまで)

さて、『雑居時代』の源流を、1967年のドラマ『あいつと私』に探る話の続きです。

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14. 喧嘩するふたり

『あいつと私』、第12話。ちょっとしたお互いの誤解から、喧嘩を始めた三郎と圭子。

三郎 「わかってるだろ、そのくらいのこと」
圭子 「わかんないわ!」
三郎 「わかんなきゃ、勝手にしろ、石頭」
圭子 「自分こそ、わからず屋の、ふーちゃかぴん」
三郎 「ふーちゃかぴんで、けっこう」
圭子 「もう!」
三郎 「口きかねーからな」
圭子 「わたしも、もう会わないわ」
三郎 「夏休みでよかったね」
圭子 「お互いにね」
三郎 「あばよ。彼氏によろしくね!」
圭子 「そちらこそ、彼女によろしくね!」

このテンポの良いふたりのやりとりは、まさに十一と夏代さんの喧嘩シーンの原型です。圭子の「ふーちゃかぴん」に、三郎への想いが見え隠れして可笑しいですね。喧嘩の中にも織り交ぜてあるふたりの心情の機微、十一と夏代さんのやりとりを彷彿します。(ところで、「ふーちゃかぴん」って、どういう意味でしょうか?)

15. キスシーン

『雑居時代』、第25話、十一と夏代さんのキスシーン。あらためて、思い返してみると、ユニオン・石立ドラマには、キスシーンと呼べる激しいキスシーンは、これしかないことに気づきました。このシーンは、石立ドラマの中では異色な存在と言えるでしょう。『あいつと私』にも、第13話で、激しいキスシーンが登場します。ライト・コメディーを基調とする石立ドラマで、あえて激しいキスシーンを持ち出してきたのは、松木ひろし氏の頭の中に、十一と夏代さんの原型として、三郎と圭子があったから...かも知れませんね。
 
16. 徳光アナウンサー

『あいつと私』第16話、ニュース番組が流れるシーン。そこに登場したアナウンサーは、何と、若き日の徳光和夫さん。そういえば、徳光さんは『雑居時代』第17話にも登場しましたね。

17. 文学少女

『あいつと私』、第16話、圭子は純平のアフリカ冒険記の推敲を引き受けます。すぐに思い浮かぶのが、『雑居時代』、夏代さん。昔から、同人誌に寄稿したり、作詞の仕事を引き受けたり... 似てますね。

18. 出生の秘密

『雑居時代』と『あいつと私』の共通点と言えば、これを取り上げない訳にはいきません。

『あいつと私』、第18話、いよいよ黒田三郎の出生の秘密が明かされます。三郎は、モトコ桜井と実業家、山脇の間に出来た子供。この秘密を知ったことで、圭子は三郎に対してさらに特別な感情を抱くようになります。この話もどこかで聞いたような...

『雑居時代』、末っ子のマリーは、実は夏代さん達のお母さんと、お父さんの元部下、小寺との間に出来た子供。その重大な秘密を共有した十一と夏代さん。この事で、ふたりの間に特別な絆ができたことは、ご存知の通りです。

「出生の秘密」をストーリーの中に組み入れていくことは、石坂洋次郎作品では、いわば定番の手法。すぐに、『陽のあたる坂道』、『颱風とざくろ』なんかを思い出しますね。『雑居時代』の、このマリーの出生の秘密は、ちょっと突飛な印象がしますが、松木ひろし氏は、何故このエピソードを入れたのでしょうか。諸説あるかと思いますが、石坂洋次郎作品の影響も大きな理由の1つでしょうね。 

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『雑居時代』の源流を、1967年のドラマ『あいつと私』に探る話を5回に渡り続けてきましたが、この話題は今回で最後となります。ニッチな話題にお付き合いいただき、ありがとうございました。

皆様、よいお年を。

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