雑居時代 ロケ地の楽しみ(16) 麻布谷町・歩道橋

『雑居時代』、最終話、ラスト。カラコラムから帰国した稲葉先生の変わりように驚きつつ、スタジオを後にした十一と夏代さん。

十一 「人間って、変われば、変わるもんだな」
夏代 「こわいみたいね」
十一 「それでいいのさ。それじゃなくっちゃ、進歩がないからな」
夏代 フイルムで作った指輪を見せながら「あなたも変わる?何年か経てば」
十一 「それだけは変わんねーよ」

夏代 「やれ、別居だ同居だなんて、先生に言わせれば小さすぎたわね」
十一 「あー、今や日本人は、全部でこの狭い島に雑居しているよーなもんだからな」
夏代 「10年経ったら、どうなっているかしら、あたしたち」
十一 「10年かー」
そして、ドラマはふたりが空想する10年後の大場・栗山家のシーンへと続きます.....

10年後の栗山邸には全姉妹の家族が同居、大勢の子供達が泣いたり、走り回ったり。「もうー、いいよー」とうんざりしながら、信の部屋へ退散する十一。

十一 「変わったね、あの頃とは」
信  「まー、そうでもないさー。昔っから相当にぎやかだったよ、我が家は」
十一 「そうだっけ」
信  「しかし...いいもんだよ、家族ってものは」

『おひかえあそばせ』に始まるユニオン・石立ドラマ。どの作品も、ありそうもないシチュエーションの中、ペーソスやラブロマンスを織り交ぜながら、軽快なコメディーが繰り広げられます。しかし、これらのドラマは、結局のところ、家族の心情のやり取りや機微を描いているんですね。

十一と夏代さんのやりとりも単なるふたりの恋愛話ではなく、十一が栗山家という家族に混ざっていてく大きな流れの中の話。『雑居時代』の魅力、それは、家族を描くというしっかりしたコンセプト、そしてその安心感や心地良さなのだと、あらためて気付かされる次第です。「いいもんだよ、家族ってものは」、信さんの言葉に、このドラマの根底を流れるテーマが凝縮されているような気がします。

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『雑居時代』の頃の大原麗子さんはとてもキレイですが、特にこの最終話の彼女は光っていますね。ちょうど、この最終話の撮影は、NHKの大河ドラマ『勝海舟』の撮影と掛け持ちをしていた頃と考えられます。主演の渡哲也さんが病気のため降板。ピンチヒッター、松方弘樹さんと急遽、撮り直しをしていたはず。女優としても、脂が乗り始めたときでもありますが、おそらく、彼女は忙しくすればするほど、輝くタイプなのでしょう。本当に女優という仕事が好きなんですね。

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このシーンのロケ地となったのは、首都高速道路、谷町ジャンクション、六本木通りに架かる歩道橋です。現在の住居表示では六本木2丁目ですが、旧地名は麻布谷町。六本木というと、一般には六本木交差点あたりのことを想像していまいます。この谷町ジャンクションあたりを六本木というには違和感があるため、 あえて「麻布谷町」としました。

今年、2015年1月3日に撮影した写真を掲載します。当時の金網はもうありませんが、背後に見えた街路灯は健在です。歩道橋がどんどん撤去されていく昨今、いつこの歩道橋も無くなってしまうのか、とても気がかりなところです。

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