雑居時代 ロケ地の楽しみ(13) 新宿、新都心歩道橋

『雑居時代』第18話。十一のカラコラム行きの餞別品を買いに、出かけることになった十一と夏代さん。

夏代 「ちょっと、離れて歩いてよ」
十一 「じゃー、オレの後、歩け」
夏代 「何で! アタシはアナタのお供じゃないのよ」
十一 「オレだって、キミのお供じゃないの」
夏代 「なによ、せっかく何か買ってあげようっていうのに」
十一 「キミが金出すわけじゃないだろ」
夏代 「帰るわよ、そんなこと言うんなら」
十一 「帰るんだったら、金置いてけ!」
夏代 「まー」
十一 「まあ、帰りたきゃ、帰ったっていいよ。その代わり、オヤジさんに怒られたって知らないからな」
夏代 「どこまで図々しいの」
十一 「あーはっはっはっ、まあ、機嫌直して一緒に歩こうや。こうやって歩くのも今日が、これで最後かもしれないからな」
夏代 「最後?」
十一 「あー」
夏代 「縁起の悪いこと言わないでよ。そりゃー、ヒマラヤで遭難する人は多いって言うけど」
十一 「おいおい、オレが死ぬって言うのか?」
夏代 「だって、自分がそう言ったじゃないの!」
十一 「そうじゃないよ。最後って言うのはね、これでもう引っ越すっていう意味なの!」
夏代 「なあんだあー(怒)!」
十一 「『なんだ』じゃないよ。そっちこそ縁起でもねえこと言うなよ。オレはね、遭難するようなヘマなことは絶対しねーからな」
夏代 「もう、よしましょ、こんな話」
十一 「君が変に気、回すから、いけねーんじゃないかよー」

このテンポの良いふたりのやりとりは,40年あまり経った今でも、とても新鮮に感じられます。また、さり気なく、ふたりの個性や機微な心情のやりとりを織り交ぜてあるあたりが、観るものを飽きさせません。

カラコラム調査隊に参加できることで、テンションが上がり気味な十一。そんな山のことよりも、「最後」という言葉を聞いて、遭難するかもしれないと、十一の身を案ずる夏代さん。本当は十一のことを想っている夏代さんだから、無意識のうちにそのような発想になったわけですが、十一は「オレが死ぬって言うのか?」と、鈍感で単細胞な応答をします。ちょっとアンテナを働かせれば、夏代さんの気持ちはわかりそうなものですが、こういうところが十一らしくて面白いですね。

十一らしさと言えば、「遭難するようなヘマなことは絶対しねー」と言うあたりにも出ている気がします。山への愛着も然ることながら、「山のことなら任せておけ」みたいな自信が感じられます。「自分はプロの山岳写真家だ」というような自負があるのかもしれませんね。

第20話では、「心の優しい人間はいつかきっとチャンスをつかんで、ぐーんと延びるもんなんだよ」と信さんも言っていましたね。一見、チャランポランな十一ですが、本当は一途で、熱血漢。そして、彼の仕事への真剣さも理解していた信さんだから出てきた言葉でしょう。

一方、夏代さんの個性は、「なあんだあー(怒)!」という言葉に出ているように思います。怒ったトーンの中に、無意識のうちに安堵感が出ているんですね。夏代さんも一途で、熱血漢なところがあり、ある意味、十一と似た者同士なんでしょう。

***

ふたりが歩いていたのは、新宿駅、西口の「新都心歩道橋」。例のごとく、できる限りドラマと同じポジションで、ロケ地を写真に収めました。運悪く、歩道橋は改修工事中だったため、工事用のシートなどが掛かっていたりしていますが、ご容赦のほどを。

以前、原宿駅前の歩道橋が撤去されてしまった話を書きましたが、大掛かりな改修工事をしているところをみると、この歩道橋はまだまだ安泰のようです。


2014年12月29日、撮影。

1974年当時は、ふたりの背後には「新宿三井ビル」が写っていましたが、今は、その後建てられた「安田火災海上本社ビル」(現・損保ジャパンビル)が背景に写っています。

2014年12月29日、撮影。新宿三井ビル。



2014年12月29日、撮影。当時、背後に写っていたのは「安田火災海上本社ビル」の建設現場。


2014年12月29日、撮影。夏代さんの背後に写っていたのは「小田急ハルク」。十一の背後には「小田急百貨店」。ふたりの間に写っていた「営団地下鉄」のマークが懐かしいですね。「東京メトロ」に変わったのは2004年でした。

コメント

人気の投稿