『雑居時代』、70年代の空気(2)

以前、『雑居時代』から70年代を感じさせるファッション、風景、調度品などをピックアップして書きましたが、まだまだ他にもありそうです。先日、雑居時代のファンサイトで、十一が着ていた茶色のダッフルコートが話題になっていました。なるほど、そういえば、当時はジーンズにダッフルコートなんかを合わせるのが流行っていましたね。また、稲葉先生が着ているモコモコっとした裏地のこんなコートも街でよく見かけました。
引き続き、70年代を感じさせるものを、まとめてみました。

1.調度品、小物

家具調ブラウン管テレビ
テレビがまだ高級品として扱われていた時代、テレビは居間に家具としてしっくりと収まっていた。
全温度チアー
当時、オイルショックで洗剤やトイレットペーパーが不足するという風説が流れ、みんな買いだめに走った。第23話で、夏代さんが洗剤とトイレットペーパーを持って、坂道を登ってくるシーンはその旬な話題を取り入れたもの。夏代さんが買った洗剤は、P&Gの「全温度チアー」。当時、このネーミングを聞いたとき、「ぜんおんど」って何だ?と、奇妙な感じがしたものだ。この「全温度チアー」、P&Gのホームページで調べてみると、ちょうど『雑居時代』が初回放映された1973年に発売されたとのこと。当時、おびただしい数のテレビCMが流れていたことを思い出す。「全温度チアー」という名称は多くの日本人に70年代の記憶として、焼きついているはず。
買い物カゴ
第3話で、夏代さんが買い物カゴを下げて帰ってくるシーンがあるが、今のドラマなら、レジ袋かエコバッグだろう。調べてみると、レジ袋が開発されたのは1972年(出典、舟木賢徳『「レジ袋」の環境経済政策』リサイクル文化社)。『雑居時代』が初回放映された1973年は、ちょうど普及途上だったと思われる。
 
2.食べ物

ファーストフード店
70年代に入り、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンのようなファーストフードチェーンが日本に上陸してきた。70年代の日本はまだ、欧米から来るものに憧れを持っていた時代だと思う。今では想像もつかないことだが、マクドナルドなどでハンバーガーを食べること自体、何んだかおしゃれな感じがしたものだ。
キムラヤの中華まんじゅう
今では寒くなると、コンビニで「おでん」とならんで人気の「中華まんじゅう」。当時コンビニがない時代は、パン屋さんや食料品店などの店先にガラスの保温ケースが置かれ、中に美味しそうな中華まんじゅうが並んでいた。レジ袋もない時代、店先で、あつあつの中華まんじゅうを紙でくるんでくれた。
3.風景

昭和の商店街
小田急線沿線のこの界隈、駅前は狭い道の両側に、魚屋、肉屋、八百屋、豆腐屋などが並び、極めて庶民的な商店街が形成されてきたが、この10年あまりで附近の様相も大きく変わってきた。小田急線の複々線化事業で、駅は高級感あるビルに建て替えられ、まわりの商店街へ赴く足も減った。昭和の商店街が消えていくのが淋しい。

成城通り、「葡萄屋」
「葡萄屋」は宇津井健さん宅の地下で奥さんがやっていたレストラン。瀟洒なお屋敷が並ぶ成城通りに、この青い看板はマッチしていたと思う。先日、この前を通ったが、このコンクリの建物は解体されていた。
成城駅前、LOTUS
第3話で玄也の背後に写っている、成城学園駅前の喫茶店「LOTUS」。同じく、第3話でフーコとデコが応援団・男子学生と待ち合わせしていたのも、この喫茶店。当時、このようなタイル貼りのモダンな感じがする、マンションやビルが多く建てられ、新しい時代を迎えたような気がした。今、このビルの2階、かつてLOTUSがあった場所はパチンコ屋になっている。

4両編成の小田急
小田急線と云えば、郊外から大量の通勤客を輸送するために連結車両数と便数を増やし、今では長くて遅い電車というイメージがあるが、当時はこんな4両編成も走っていた。
聖イグナチオ教会
四谷駅前、上智大学に隣接するこの教会、外濠の土手や駅舎とともに、永らく四谷の風景を形成する要だったと思う。美しく、趣のある聖堂だった。1998年に建て替えられ、昔の姿は全く消え失せてしまったのは残念。
デパートの屋上
第11話で、十一とマリーが競馬の中継を聞いた、新宿「伊勢丹」デパートの屋上。当時は、デパートの屋上に小さなジェットコースターや回転木馬などがあった。デパートの食堂で、「日の丸・お子様ランチ」や「フルーツパフェ」を食べて、屋上の遊園地で遊んだ。
4.流行、世相、生活様式

TOTOのCM、「お魚になった私」
湯舟に入った女性が片足を上げながら、「お魚になったワ・タ・シ~」と歌うTOTOのCMは、何故か今でも印象深い。この場面はそのCMのパロディー。
第2次怪獣ブーム
第23話の冒頭、マリーが見ていた怪獣番組は、同じ日本テレビ系列で放映されていた『ファイヤーマン』。ウルトラマンで有名な円谷プロダクションの作品。60年代のウルトラシリーズによる怪獣ブーム終焉以降、1971年に『帰ってきたウルトラマン』で、再び怪獣ブームが起きる。当時、杉田かおるちゃんも特撮怪獣モノが本当に好きだったようだ。
上村一夫原作、『同棲時代』
『雑居時代』というドラマ・タイトルは、当時、流行った上村一夫原作のマンガ、『同棲時代』をパロディったものというのが、「雑居」ファンの間では定説。成人向けコミック誌に連載されたこのマンガも一役買って、「同棲」が若者たちに一大ブームとなり、社会現象化した。















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昨年、『雑居時代』はネガフィルムから直接、修復・デジタル化され、DVDになったりCSで放映されましたが、フィルム撮り本来の色彩と臨場感が蘇った感じがします。当時、斜陽となった映画産業から活動の場をテレビドラマへ求め、ユニオン映画に合流した日活のベテラン映画人。彼らは『おひかえあそばせ』に始まる「石立ドラマ」を制作するにあたり、細部にまで映画並のレベルを求めたそうです。当時の放送技術やテレビ受像機の性能では本来の色彩などはわかりませんでしたが、今、リマスター版を観てみると、あらためて雑居スタッフ達のそんなこだわりが伝わってきます。このドラマから当時の空気が臨場感を持って伝わって来るのも、日活のベテラン映画人達の技の賜物かもしれませんね。

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