石立ドラマをふりかえる

今年、2012年は、『雑居時代』、『水もれ甲介』、『気まぐれ本格派』の高画質なデジタルリマスター版がCSで放映され、6月には松木ひろし氏がラジオ番組に出演されたり、はたまた、雑誌にも特集が組まれたりと、プチ・石立ドラマブームが起きた(あるいは、メディア企画会社によって起こされた?)と感じています。

高画質化は、ある程度のDVD販売ボリュームやCSでの放映料が見込まれなければ、採算は取れないでしょう。当時、リアルで観たり、夕方4時からの再放送を観るため、一目散に学校から帰ってきた世代の人たち、すなわち、オリジナル・ファン層に加え、2002年のテレビ東京での再放送で『雑居時代』を知った人たち、その後のチャンネルNECOの『石立鉄男アワー』視聴者など、ファン層は着実に定着し、増えてきている。こうした状況を見込んで、プチ・ブームは企画されたのだろうなー、と推測しています。ファンとしては、高画質化は感謝していますし、今や石立ドラマが着実に幅広い世代に受け入れられているのは、嬉しい限りです。

ツイッターなどには、「最近のドラマは刺激的過ぎる。それに比べ、石立ドラマは安心して観ていられる」と云ったようなコメントが、よく見受けられます。たしかに、石立ドラマは古き良き時代の「ほのぼの、ホロリと」させるホームドラマという面が受け入れられ、今の時代に、新たなファン層が広がっているのかもしれませんね。

一方、プロデューサー・小坂敬氏と脚本・松木ひろし氏は、かつて『TVガイド』の特集インタビュー(1991年8月9日号)で、以下のように、制作者側のねらいを語っておられました。

(要約)
小坂氏「石立鉄男のキャラクターを生かして、ユーモラスな状況の中に石立を入れるとどうなるかをいつも考えてました。シチュエーションの面白さが人目を引き、それに加え、ホロリとした人情を出していこうというのも、このシリーズの基本です。考えてみると、あれがあの時代のドレンディー・ドラマだったんですね」

松木氏「それまでのパターン化されたホームドラマにはないシチュエーションを考えました。おとなしいコメディーが多い時代だったから、とんでるコメディが受けたのでしょう」

当時、これらのドラマを企画・制作した方々のねらいは、「ほのぼの、ホロリ」という路線より、「とんでる」路線で、まず人目を引きたかった(視聴率を取りたかった)。石立ドラマは水曜、日曜・8時枠に放映されてましたから、若い年齢層に受けるためには、そのような方策が必要だったとも云えます。

今では 石立ドラマよりも、もっと奇抜なシチュエーションを設定している刺激的なドラマが溢れてます。今の時代に初めて石立ドラマを観る人たちには、小坂氏や松木氏のそうしたねらいは、ちょっと意外かもしれませんね。

2012年をふりかえると、「石立ドラマ」は普遍的な名作として着実に広い世代に受け入れられていると感じられました。そして、受け入れられている理由は、何と言っても、「とんでる」シチュエーションよりも、家族、愛、笑い、涙といったオーソドックスで普遍的なテーマを丁寧に描いている点にあると思います。

『気になる嫁さん』のデジタルリマスター版DVDが12月26日に発売されました。おそらく、『パパと呼ばないで』のデジタルリマスター版も、まもなくCSで放映されたり、DVDが発売されるでしょう。2013年も石立ドラマファンが静かに、着実に広がっていくといいですね。


補足

『TVガイド』1991年8月9日号から



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