雑居時代 ロケ地の楽しみ(2) 成城の街、その1

栗山邸では、電車の音が聞こえます。

秋深まる肌寒い朝、電車の警笛や線路の音が聞こえ、
夏代さんがリビングのカーテンを開ける。
薄明るい台所で、彼女は家族の朝食を作り始める。
灯油ストーブの前に置かれた和卓には、栗山家の面々が集まり、朝食を取り囲む。
そして、朝食を終えた者から慌ただしく、「いってきまーす」と栗山邸の玄関を後にし、
小田急線の成城学園前駅へと向かう。

電車の音から、勝手な想像を膨らませてみましたが、典型的な栗山家の朝は、こんな感じではないでしょうか。栗山家のみならず、私鉄沿線郊外の住宅では、毎朝、似たような光景が繰り返されているのだと思います。

毎日繰り返される日常の中にある幸せ。

高度成長期には、都心から郊外へと住宅地は急速に広がって行きました。このとき、日本の私鉄会社が果たした役割は大きかった言われています。

鉄道が大量の通勤・通学客を輸送するだけではありません。鉄道会社系列の不動産会社が、宅地開発を行い、住宅街ができると同時に駅周辺には、系列会社が運営するスーパーマーケットが開業する。私鉄沿線・住宅街の生活というのは、知らず、知らず、鉄道会社と深く関わるようになっています。

善くも悪くも、私鉄路線はブランド化され、駅や電車の映像を見ただけで、そのドラマの舞台となる場所や、登場する家庭の背景などが想像できます。駅や電車が当たり前のように生活の風景に溶け込んでいる日本ならではの、ドラマの特徴かもしれませんね。

さて、その小田急線ですが、複々線化事業で、2006年には成城学園前駅附近の線路は全て地下に潜ってしまいました。騒音は無くなり、環境面では格段に良くなりましたが、一方、あの長年見慣れたクリーム色にブルー・ストライプの電車が成城の街の風景から消えてしまったことには、残念さと違和感を覚えます。

やはり、電車と駅は私鉄沿線の街の風景を形造る、要なんですね。この辺りでは、電車の音が聞こえたり、電車が走る風景は、昔のドラマの話になってしまいました。

沿線の風景は大きく変わりましたが、ドラマに登場した場所を、当時の面影が感じられるように、できるだけ同じアングルで写真に収めてみました。数が多いので、2回に分けてご紹介します。

第2話

1. 成城学園前駅北口商店街、増田屋前 

2013年9月29日、撮影
以前にも取り上げた増田屋だが、入り口をドラマと同じアングルで撮影。
全く、40年前と同じ。一度も改装したことがないそうだ。

第3話
1. 成城学園前駅、北口商店街、喫茶店「LOTUS」前

2013年9月29日撮影
喫茶店はもう無いが、タイルに当時の面影が残っている。右側部分はパチンコ屋の看板が覆いかぶさっている。

2. 成城学園前駅、北口商店街、大和屋前(増田屋の斜め向かい)

2013年9月29日、撮影
当時の建物は全く無くなってしまった。

第8話
1. 世田谷区立・明正小学校前

2013年9月29日、撮影
緑色のガードレールが同じ。当時のものではないと思われる。

2. 世田谷区成城2丁目19番地附近、マリーが小寺に声をかけられる。

2013年9月29日、撮影
左角のお宅の黒いフェンスは当時のまま。
この四つ角は、次回紹介する、十一が小寺を追いかけるシーンでも、使用されている。

3. 世田谷区立、明正小学校、校門向い
次に紹介する3つのカットとも、同じ場所。撮影アングルが異なるだけ。

2013年9月29日、撮影


2013年9月29日、撮影


2013年9月29日、撮影
いかがでしたか?

(2014年3月6日、追記)

駅前にあった喫茶店「LOTUS]

1971年の東宝映画『誰のために愛するか』に、この喫茶店が登場します。やはり撮影所が近くにあるせいか、東宝作品のロケ地も成城近辺が多いですね。

『雑居時代』第3話


映画『誰のために愛するか』

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